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この1年間どんな本を読みましたか。あるいは、聴きましたか。そしてどんな感動や学びがありましたか。私が出会った本の中から4冊をご紹介します。
Don Norman (2013) The Design Of Everyday Things Cliff Kuang with Robert Fabricant (2019) User Friendly によると、認知心理学を専門とする大学教授の著者は、1979年に起きたThree Mile Island原子力発電所のメルトダウン事故の調査委員会のメンバーに選ばれます。調査報告では、事故は作業員のミスではなく、コントロールルームの設計の欠陥と、設計者が人間の行動心理やパターンを理解していなかったことが原因だったと結論付けます。著者は90年代にAppleに加わりUser Experience (UX)という言葉を生み出し、"human-centred design"を追求します。製品だけでなく、建物、街、学校、システムなど良いDesignが必要なすべての領域に通用する視点を得ることができます。 "Human-centred design is a design philosophy. It means starting with a good understanding of people and the needs that the design is intended to meet. This understanding comes about primarily through observation, for people themselves are often unaware of their true needs, even unaware of the difficulties they are encountering." Jacinda Ardern (2025) A Different Kind of Power 女性として世界最年少の37歳でNew Zealandの首相になり、在任中に女児を出産してからは母親として一国の宰相として、数々の課題を乗り越えた異色の政治家の自叙伝。 "The things you thought would cripple you will in fact make you stronger, make you better. They will give you a different kind of power, and make you a leader that this world, with all its turmoil, might just need." Brene Brown (2025) Strong Ground 著者による紹介文には「先の見えない深い不確実性と、威圧的態度や傲慢さ、さらには残酷な行動さえもが、公に認められたリーダーシップスタイルとして受けとめられているという度を超えた悲惨な状況の中、本書は実践的かつ戦術的な洞察について論じます。それは、他者とのつながりと自己規律、責任感に基づくリーダーシップを発揮しながら、集中力と成長の力を取り戻すために必要な思考様式とスキルセットを明確に示すものです。」とあります。この本は、私たちの意識の中にあるリーダーシップのあるべき姿の再構築を推し進めてくれます。 "Individually and collectively, we are all looking for strong ground right now. We need to push into the source of our strength and sturdiness so we can navigate the world." Robert Cialdini (2021) Influence 行動心理学者の著者は、私たちが日常的に遭遇する様々な「影響」とそこから導き出される「判断」や「行動」を明解に分析します。人間の直感と行動の科学を理解すること、そして、その理解をもとに自身の判断や行動に道義的な責任を持つ必要性に気がつきます。 "With personally disquieting frequency, I have always found myself in possession of unwanted magazine subscriptions or tickets to the sanitation workers' ball. Probably this long-standing status as sucker accounts for my interest in the study of compliance: Just what are the factors that cause one person to say yes to another person? And which techniques most effectively use these factors to bring about such compliance? I wondered why it is that a request stated in a certain way will be rejected, while a request that asks for the same favor in a slightly different fashion will be successful. So in my role as an experimental social psychologist, I began to do research into the psychology of compliance." 2026年はどんな本に出会うでしょうか。みなさま方、希望にあふれる新年をお迎えください。 先週OECDが主催するWebinar 'Education for human flourishing' がありました。FacilitatorのAndreas Schleicher氏が、カリキュラムをデザインしていく中で課題として認識していることは何かという問いかけをしました。出席者の一人、Singapore教育省の教育局長は① 教員のCompetencies:知識や技能だけでなく人間性、使命感、思考力、表現力などの資質や能力 ② 教員のSkill building、受容力 ③ すでに飽和状態のカリキュラムに量的・時間的な余裕を生むこと ④ 生徒、保護者、教員のMindset の4点を挙げました。
1. カリキュラムは固定のものではなく、より良い内容にするためにデザインをしていくという意識を教員が持つことの必要性と専門性を強調していること。 2. Competencies、Skill building、Mindsetは学校組織と運営の改革、学習内容・方法・評価の改革、Digital Transformation (DX)の推進を実行する際に、持続性のある着実な成果をあげるために重要な要素であること。さらに、それらのmacroな視点に立って学校リーダーに包括的な研修やサポートの機会を提供することが必要であることも示唆している。という点で現実的で先進的な考え方です。 一方、「カリキュラムマネジメント」について文科省の解説書には「大切にすること」として、「各学校のカリキュラム・マネジメントを充実させることは、新たな取組を追加することではありません。学校の様々な業務の効率化を図ることにより、カリキュラム・マネジメントの充実につなげていきます。全教職員が持ち味を活かしながら力を合わせ、わが校の教育課程を全教職員が語れる学校づくりを通して、「社会に開かれた教育課程」の実現を目指します。」文部科学省 (2017)とあります。教育行政のリーダーの発言と文科省の刊行物にある記述を単純に比較することはできませんが、大きな隔たりがあります。 質問です。 ① 学校の文化として、個人の実践として、カリキュラムをデザインする習慣はどのように浸透しているでしょうか。内容や成果はどのように共有されているでしょうか。 ② 生徒、保護者、教員が共通のMindsetを持つことは可能でしょうか。どのような手順と方法で共通の意識や価値観を持つことができるようになるでしょうか。 異なる興味・関心、思想・信条、立場・利害を持つ人々が同じMindsetを持つためには、対話をもとにした心理的安全性を確保することが最優先されます。しかも、そのような土壌づくり、準備が不可欠です。前回問題提起をしたDXの推進に際しても、先の教育局長の発言と根本的な部分で一致している論説がありました。
このような全体を俯瞰した周到な準備と過程を加えたRoadmapを通して、DXや学校改革が成功するのでしょう。自分のこれまでの取り組みには欠けていた要素であったと振り返っています。 先週取り上げたNew York Timesの記事を引用したAdam Grantの投稿に対して、語気の強い反論がありました。その要旨は、
“1. Computers are about creative opportunities, not consumption and recall 2. Computers are a tool that is ubiquitous in the real world (so why not in the classroom) 3. Computers are not meant to support an old system, they are meant to change it.” A. Juliani (2025) Yes, I’m Defending The Use Of Computers For Learning 私は3の指摘には共感しますが、1と2については慎重な立場です。前回私が述べた根拠は、ICT機器が学習活動、コミュニケーション、学校運営などを改革するために活用されていないという現状に対する課題意識です。使うことが目的ではなく、変えること、より良いものを提供することが目的なのではないかという視点です。学習活動にICT機器を使うか使わないかという議論ではありません。 質問です。 ① どちらを取るかという二者択一の議論ではなく、相反する考えや方法を統合するParadoxical Thinking 逆説的思考を用いるとどのような利点があるでしょうか。 ② 教育のDX (Digital Transformation) を進めていく過程で、予算案だけでなく、利用者としての教員の総括的な支援や組織の再編も含めたRoadmapが各学校にあるでしょうか。 私たちの生活にはParadox 矛盾や逆説にあふれています。教室で起こり得る状況でみてみましょう。理想:各自がICT機器を活用して発展的で探究的に学ぶ活動を提供したい。それが深い学びを生む。危惧:教材開発などの準備にかける時間がない、方法がわからない、試してみる自信がない、カリキュラムの積み残しが出てしまう、他の教員の賛同が得られない、確実に一定数の生徒が関係のないサイトやゲームにいくなど集中度が欠けたものになってしまう。結論:ICT機器は使わず、教科書・副教材から解答を探させてワークシートに書かせる作業にする。 Paradoxical Thinkingを用いることで、目の前の複雑な問題の解決が可能になる、創造力や論理的思考能力が向上するという利点があげられています。 "Your own job may already contain many contradictory goals that could inspire paradoxical cognition. In the past, you might have assumed that you need to sacrifice one for the other – but if you want to cultivate the paradox mindset, you might spend a bit more time considering the ways you can pursue them both, simultaneously. Rather than seeing the potential conflicts as something to avoid, you can begin to view the competing demands as an opportunity for growth and a source of motivation. (And if there aren’t any external pressures, you could create your own – asking, for instance, how you could increase the efficiency and accuracy of your performance on a particular task, if only for an exercise in paradoxical thinking.) There may be no immediate solution, but the very act of thinking about the possibility of reconciling those issues could still lubricate your mind for greater innovation elsewhere." Loizos Heracleous and David Robson (2020) BBC, Why the 'paradox mindset' is the key to success 「即座の解決策はないかもしれませんが、それらの問題を統合的に解決する可能性について考えるという行為そのものが、他の分野でのより大きな革新に向けてあなたの思考を潤滑にするかもしれません。」 先ほどの例で考えてみると、「準備に十分な時間がないのはなぜか」「自分に自信がないのはなぜか」「共感を得られないのはなぜか」「学習活動に集中できない生徒がいるのはなぜか」という問いかけから始まることで、妥協することなく目ざしたい方向へ進むことができるかも知れません。 "It's time to remove laptops from classrooms. 24 experiments: Students learn more and get better grades after taking notes by hand than typing. It's not just because they"re less distracted—writing enables deeper processing and more images. The pen is mightier than the keyboard.” Jean Twenge (2025) The Screen That Ate Your Child"s Education, New York Times
「教室からノートパソコンを撤去する時が来ました。24の実証実験の結果:手書きでノートを取った生徒は、タイピングよりも多くのことを学び、成績も向上する。単に気が散りにくいからではありません - 書く行為はより深い情報の処理とイメージの定着を促します。ペンはキーボードよりも強いのです。」 組織心理学者のAdam Grantからの先週のeNewsletterにあった引用です。 多くの研究者や教育関係者によって「手書きノート」の有効性は指摘されています。けれども、この記事が示唆する学習活動は知識理解を第一義とする講義型の授業なのではないかと気がつきます。さらに、教師と子どもたちとの関係性や教室の文化・習慣、学習内容や方法が子どもたちの興味や関心をどう増幅しているかという広義の「学習の科学」を飛び越えて結論づけられるのだろうかという疑問も起こります。 一方で、日本やオーストラリアの学校の実情はどうでしょうか。私の限られた範囲での観察では、子どもたちはそれぞれデバイスを持って教室に来ますが、実際の学習活動は3通りのパターンがあります。①教科書+副教材とノートがセットになった講義型 ②教科担任が印刷したワークシートをもとにする作業型 ③各自のデバイスに配信されたGoogle Docsにある課題をこなす作業型。基本的に②と③の作業の質は同じです。 質問です。 ① 学校でのひとり1台のICT機器環境は、どの国でも学校教育に関わるすべてのステークホルダーの莫大な投資と経済的負担をもとに実現されました。その時に共有された当初の目的、Visionは何だったのでしょうか。 ② ひとり1台のICT機器環境は学校での学びの質を本質的に改革しているでしょうか。ICTを活用した主体的で発展的な学習活動や、学習内容を個別化し深い理解と学びを提供することを実現しているでしょうか。一人ひとりの学習の状況や理解の深度をデータとして拾い上げているでしょうか。 21世紀が始まった頃から、国内外で教育に関わる様々なレベルの人々が共有していたICTを活用したBig Pictureがありました。たとえば、学習の個別化や多様化、学習者自身が自分の学びをデザインするAgency、広い能力観に基づく多様な評価方法、地域社会と有機的につながった学習活動、次の時代に必要な資質を身につけたリーダーを育てること。それらは言葉を換えれば、学校教育の根幹に関わるParadigm shiftの具体的な実践例でした。 「後戻り現象」は、そのようなParadigm shiftができなかった、しようとしなかったという現実的な課題の表出のように思います。さらに、教育に関わる人々にとって、教育の様々な領域でUnlearn, Relearnすることのむずかしさが明らかになったとも言えると思います。 さて、オーストラリアでは今週から16歳以下の子どものSNSなどの利用禁止が始まります。状況を注目したいと思います。 勤務校で毎年楽しみにしている作品展がありました。7年生から12年生までがこの学年で取り組んだ多種多様な創作活動の成果が並びます。そして来場者へのもてなしも創作活動のひとつです。このイベントは、まさにCreativityの祭典です。(3分30秒のダイジェスト版はこちらです。これらの他にdigital media系やgameなどのprograming系の作品もありました。)
一つひとつの作品を見入ると、制作した子どもたちの声や表情が伝わってくるように感じます。制作の過程で工夫したことや期待通りに進まなかったこともあっただろうと想像しながらそれらの作品を鑑賞していると、どれもが堂々と胸を張って存在し、明らかにそこには見た目の完成度の良し悪しや他者との比較といった尺度は制作者にはないように感じられます。全体を鑑賞し終えてから、いわゆる普通教科の学習活動と本質的に何が異なるのか、あるいは同じなのか考えました。 質問です。 ① 子どもたちの学習活動への集中度、習熟度、達成感、Ownershipが創作活動を主とする教科と知識や理解、思考力を主とする普通教科に違いがあるでしょうか。 ② 教科を問わず、Creativityに必要な要素とその過程は何でしょうか。 子どもたちが創作活動に向かう時、まず成果物や完成品を見ること・思い浮かべることから始まります。この時点で子どもたちは学習活動の目的を明確に認識・意識します。次に先生からどのようなステップで進めば良いのか説明を受けるでしょう。その時に自分は何ができて、何ができないかを認識するでしょう。そしてどのようなサポートがいつ必要なのか自身で認識します。制作作業に入る前にはどのように進めば良いのか自分なりの計画を立てるでしょう。実際に制作が始まると、自分が活動しやすい進度で進めていきます。毎時間の終わりには進捗状況を振り返り、次にするべきことを明確に意識します。こうして作品が完成に近づいていきます。 子どもたちが制作の過程で自分は何ができないか、むずかしいか、理解できないかを認識した時にどのようなサポートを得ることができるかということが重要なポイントになります。これが心理学者のVygotskyが提唱したThe zone of proximal development (ZPD)です。自分ができることとできないことの間にZPDが存在し、教師、友だち、家族、資料などからのサポートを得て、できなかったことができるようになっていくという過程です。 ZPDによって子どもたちは一つひとつハードルを越えて思い描いている完成に近づいていきます。この過程があることで自分の学習や制作に向かい合いより強いOwnershipを持つことにつながっていきます。 こうして見てくると、創作活動が主となる教科だけでなく、普通教科でもこのサイクルは当てはまりそうです。具体的に考察してみると、学習単元の終わりに自分は何ができるようになるのか、何が理解できるようになるのかという学習の出口が普通教科では若干不明確の場合があるでしょう。さらに学習活動がどのように進んでいくかは、たいていの場合教師主導型の学習活動のために明確ではありません。そして学習の進度は自分のペースでとはならず、全体と合わせなければなりません。 これらの違いがあるものの、さほど大きな問題ではなさそうです。普通教科と芸術的教科とは学習内容も方法も根本的に異なるという先入観を捨てること。表現を換えれば、学習活動の日常の習慣を少し修正することで、創作活動が主となる教科のように普通教科も子どもたちの学習へのOwnershipを確保して、集中度や達成感を味わうことのできる学習活動が可能なのではないでしょうか。たとえば、学習活動の中にドリル的な反復練習ではなく、意味のある創作的な活動を加えることも一案です。 Australiaの中等教育学校での英語の学習は、教科書をもとに学習を進めるというのではなく、物語文の学習の時には1冊の本を読み深めていきます。先学期には英語担当の教員の都合が悪い時に、7年生のいくつかの英語のクラスの補教することが数回ありました。それらのクラスは200ページを越える自伝小説を教材として使っていましたが、担当教員からの申し送りメモには、場面ごとのまとまりを子どもたちひとりずつ1ページを音読させてください、とありました。半信半疑でそのやり方を教室で始めると、驚いたことに、多様な子どもたちのいるそれらのクラスで意外にもこの輪読は成功しているのでした。音読が得意な子も、苦手意識がある子も、挙手して自らの意思で音読します。場面が長い時には授業時間の終わりまで45分間以上読み続けたこともありました。
全員で音読し読み深めるという伝統的な手法の学習活動ですが、なぜこの方法に子どもたちは集中しているのか。学習心理学のヒントがあるように感じました。 質問です。 ① 学習活動の中で子どもたちがとても高い集中度を示したという体験事例はいくつもあると思います。あるいは自身が学習者として、高度な集中を体験されたこともたくさんあると思います。それらの場面で共通している要素は何でしょうか。 ② 日常の学習活動の中で、目の前の子どもたちの学習への集中度はどのくらいでしょうか。そのことを意識する機会はどのくらいの頻度で訪れるでしょうか。 学習活動への集中度について考えている時に、次のレポートが目にとまりました。 Top 5 tips for better engagement 1. Be engaged 教師が教えることに集中していること A key to actively engage learners is to be an actively engaged teacher. Students told us they want to see our passion for what we do and our interest in the content we are teaching them. 2. Be engaging 学習する内容に引きつけられる要素があること Students know that sometimes learning involves doing things that are not that fun or enjoyable, but that doesn’t mean teachers can’t do things to make learning more engaging for students. 3. Help us get actively engaged 学習者が積極的にかかわること Students told us they want to be actively engaged in what they are learning and not just stuck in passive participating mode all the time. They expressed an interest in learning about learning and discovering what works for them as a learner. 4. Engage with us 教師が学習者と向き合っていること Relationships are at the core of learner engagement and the student responses suggest they are very aware of the importance of feeling a sense of connection with their teacher. This included feeling valued, understood, supported and safe, but also challenged to grow and improve. Students don’t want us to make things easy for them, they want us to believe in their capacity to achieve and grow as learners. 5. Listen to us and trust us 教師が学習者に耳を傾けていること Active engagement involves agency and voice. That is, students expressed their desire to have a say in what they learn and how they learn, so they feel empowered to take actions that increases engagement, which in turn helps them achieve their learning goals. Australian Council for Educational Research (2025) Growing the seeds of engagement: Students share their top tips for teachers 私たち、教師のありようが子どもたちの集中度に密接に関わっていることがわかります。 北半球では夏休みが終わり、新しい学期が始まった、あるいは始まろうとしている時期でしょうか。久しぶりに会う子どもたちは休みの間に背が伸びていたり顔つきがかわっていたり、それらを発見するたびに成長期の人間を相手にする仕事に就いていることにおもしろさを感じると同時に、大きな責任を感じる時でもあります。
質問です。 ① 学期の最初に子どもたちに何を話しますか。どんな質問をしますか。 ② 休み前の学期で学習した内容を子どもたちは正確に覚えている、身につけていることを期待しますか。それとも忘れていても仕方がないという心構えを持ちますか。 学校での教育活動は「学習の科学」に基づいた実践が行われる必要がありますが、実際には非科学的な、言葉を換えれば旧態依然の慣習を継承していることが多いように思います。今日は学びの科学に基づいた実践例として Retrieval Practice (想起練習) について考えたいと思います。 "Retrieval practice is a strategy in which calling information to mind subsequently enhances and boosts learning. Deliberately recalling information forces us to pull our knowledge "out”and examine what we know. For instance, I might have thought that I knew who the fourth U.S. President was, but I can't be sure unless I try to come up with the answer myself (it was James Madison). Often, we think we've learned some piece of information, but we come to realise we struggle when we try to recall the answer. It's precisely this "struggle" or challenge that improves our memory and learning by trying to recall information, we exercise or strengthen our memory, and we can also identify gaps in our learning." Pooja Agarwal (2020) How to Use Retrieval Practice to Improve Learning 「想起練習とは、情報を意識に呼び起こすことで学習効果を高め強化する方法です。意図的に情報を想起させる行為は、学習者に既習知識を「引き出す」ことを強制し、自分が何を知っているかを明確にします。」 このRetrieval Practiceの理論に基づいて新しい学期の最初に子どもたちへの問いかけを考えると、「夏休みの間に何をしましたか」ではなく、「夏休みに学んだことは何ですか」が適切な問いになるでしょう。そして、学んだことをふたつ挙げてもらうと、子どもたちの思考をより活性化させることにつながるようです。まず最初に、先生ご自身が休み中に何を学ばれたのかをお話しされてからこの問いかけをすると、子どもたちにとってこの質問がより身近なものになるでしょう。 私は子どもたちに質問を投げかけた時に、Think-Pair-Shareという3段階を取ります。これもRetrieval Practiceのひとつですが、まず自分一人で考える・振り返る時間を与える、次にペアでその内容を共有し合う、最後にグループやクラスで発表するという手順で進めます。子どもたちのMetacognition を鍛え、心理的安全性を確保することに効果があります。お試しください。 先週は学校でStrategyについて話し合う機会がありました。ある目的を達成するために総合的に進められる計画や運用方法と定義すると、真に有効なStrategyはどうあるべきなのでしょうか。
“Competitive strategy is about being different. It means deliberately choosing a different set of activities to deliver a unique mix of value.” “the essence of strategy is in the activities - choosing to perform activities differently or to perform different activities than rivals. Otherwise, a strategy is nothing more than a marketing slogan that will not withstand competition“ Michael Porter (1996) What Is Strategy? 「対抗力のあるストラテジーとは、他とは異なっているということです。それは、ユニークな価値の組み合わせを提供するために、異なる一連の活動を意図的に選択することを意味します。」 質問です。 ① 日本の学校には伝統的に教育方針や理念が掲げられていますが、 それらがVision、Missionと異なる点や共通する点は何でしょうか。 ② 日本の学校で年度ごとに設定される「重点教育目標」のようなものと、ここで取りあげているStrategyと本質的に異なる点は何でしょうか。 前述の論文の中でPorterは1970, 80年台に世界中で急進出した日本車メーカーはOperational effectivenessでは優れていたがStrategyを持っていなかったと指摘しています。その結果、どの社も類似した製造、経営形態を維持することになったと分析しています。 これは現在の日本の学校、とりわけ私立校に顕著にあらわれている現象と似ているような気がします。どの学校も同じような成功基準、価値観、教育観、能力観を持ち、縮小する学齢人口の中で生徒数を維持することと限定的な数値を上げることに集中しているように見えます。 学校も経営のひとつとして捉えると、運営面でも教育の内容や方法においても確実なStrategyを設定することは必要不可欠でしょう。 “The challenge of developing or reestablishing a clear strategy is often primarily an organisational one and depends on leadership. With so many forces at work against making choices and tradeoffs in organisations, a clear intellectual framework to guide strategy is a necessary counterweight. Moreover, strong leaders willing to make choices are essential.” Michael Porter (1996) What Is Strategy? 「明確なStrategyの策定や再構築という課題は、多くの場合、主として組織的なものであり、リーダーシップにかかっています。」 もし学校のリーダーシップチームがStrategyの策定や再構築の必要性を感じていなかったら、学年や教科という小グループで取り組めば良いと思います。そこでも賛同を得られなければ、自分のホームルームやクラスだけでも試みにStrategyを持ってみてはいかがでしょう。 7月最後の週に文部科学省・国立教育政策研究所から今年度の全国学力・学習状況調査の結果が発表されました。これは4月に小学校6年生と中学校3年生を対象に国語、算数・数学、理科の教科で実施された調査によるものです。「各年度の問題のなん易度を厳密に調整する設計とはしておらず、年度によって出題内容も異なることから、過年度の結果と単純に比較することは適当ではないことに留意が必要。」(国立教育政策研究所) という但し書きがありましたが、すべての教科で平均正答率が昨年度と比較して下がったという報道が流れました。
同じ日にAustraliaでは毎年3月に3、5、7、9年生を対象に実施されるReading, Numeracy, Writingの能力を測るNAPLAN (National Assessment Program - Literacy and Numeracy) の結果が公表されました。そして、3分の1の児童生徒はLiteracyとNumeracyで該当学年の習熟度レベルに達していないという報道がありました。どちらの国でも好ましくない結果があらわれました。 NAPLANの場合は教科内容、子どもたちが学習した内容に直接関係する設問ではなく、一般的で総合的な能力を測定することに重点を置いています。そして採点結果は4段階の習熟度レベル (Exceeding, Strong, Developing, Needs additional support) で表示されます。日本の学力調査とは異なり、個人の結果は学校や保護者にも届けられ実際の学習内容や指導計画に活用されます。さらにMy Schoolというサイトを通して全国に公表されます。このMy Schoolは学校の教育の質や財政状況を示唆するデータが掲載されており、NAPLANの結果も重要な指標として注目されます。結果が公表された直後に次のような記事(Podcast)が出てくるのもそのような背景があるからです。 "I think one of the things that we'd really like to see more movement on is strengthening early screening, particularly in reading and maths. So, there has been some movement particularly with almost all governments committing to implementing a year one phonics screening check in government schools. That's really great because I think Year Three is too late to wait to identify learning gaps, particularly in something as vital as reading. We really want to know early whether there's gaps and fill them quickly so that they don't become wider. But that fourth year of school is probably too late to wait for something like that." Grattan Institute (2025) Grading the 2025 NAPLAN results 質問です。 ① 日本の学力調査は文科省が目的としてあげている「学校における児童生徒への学習指導の充実や学習状況の改善等に役立てる」ことに寄与しているでしょうか。その具体例があるでしょうか。「学力」の定義は何でしょうか。 ② 日本の各学校に毎年提出が義務付けられている「学校評価」とAustraliaのMy Schoolにあらわれるデータの根本的な違いは何でしょうか。 学校や教育活動に関わる調査、そこから得られた結果の分析の究極的な目的は、組織としての学校の質や教職員の仕事の専門性を向上させること、創造的に課題を解決していくことにあるのだと思います。どのように前に進むかという姿勢が確立されていないと、調査はそれ自体が目的となってしまいます。 さて、同じ週にAustralia政府は、16歳以下の子どもがアカウントを開くことや利用を禁止するsocial media platformにYouTubeも加えることを発表しました。すでに学校内では携帯電話の所持が禁止されています。休み時間の子どもたちの行動や活動が、禁止される前とは完全に様変わりしました。 "For better or worse, I am associated with the concept of "multiple intelligences”—the belief that humans have a range of intellectual strengths, and that we differ from one another in which intelligences are prepotent—which should be evoked when we are learning, and which should be drawn upon in our interactions with ourselves, and with others” Howard Gardner (2025)
「良くも悪くも、私は "多重知性 “という概念に関係している。人間にはさまざまな知的強みがあり、どの知性が優れているかは人によって異なるという確信である。」 最近のBlogでHoward Gardnerはこのように自分の立場を明確にして、「21世紀の第二四半期の教育」というエッセイを書いています。「世界の他の分野に比べて、教育は非常にゆっくりと変化している」(Howard Gardner) 、その教育がAIをはじめとするテクノロジー、最新の兵器、気候変動などの影響を受けて再考察の時期を迎えているという認識に基づいています。 Howard Gardnerが1983年に発表したMultiple Intelligences理論は、人間の能力や知性を広く豊かにとらえると同時に、学習のあり方について根本的な視点の転換を示唆しました。「個別化」と「多元化」です。 "By individualising, I mean that the educator should know as much as possible about the 'intelligences profile' of each student for whom he has responsibility; and, to the extent possible, the educator should teach and assess in ways that bring our that child's capacities. By pluralising, I meant that the educator should decide on which topics, concepts, or ideas are of greatest importance, and should then present them in a variety of ways. Pluralisation achieves two important goals: when a topic is taught in multiple ways, one reaches more students. Additionally, the multiple modes of delivery convey what it means to understand something well. When one has a thorough understanding of a topic, one can typically think of it in several ways, thereby making use of one's multiple intelligences.” Howard Gardner (2011) Multiple Intelligences : The First Thirty Years 「ある単元を複数の方法で教えることで、より多くの生徒の理解を得ることができる。さらに、複数の方法で教えることで、何かをよく理解するということの意味を生徒に伝えることができる。学習単元を十分に理解すれば、課題について複数の方法で考えることができる。」 質問です。 ① 理想的な学習活動は、学習者一人ひとりに合った個別化や多元化(複数化)が必要条件であるという考えに共感できますか。 ② 学習に活用するテクノロジーの中で個別化や多元化(複数化)を可能にするものがあるでしょうか。子どもたちの学習活動は個別化や多元化(複数化)が現実のものとなっているでしょうか。 Howard Gardnerは認知心理学者としての立場から少し離れて、近未来に必要な資質として20年前に次の5つを挙げています。 ①思考力、問題解決能力 ②様々な情報をつなぎ合わせて自分だけでなく他の人にも有益な意味を形成する能力 ③課題を認識し新しい解決策を創りあげる能力 ④敬意を持って人と接する能力 ⑤困なんで厄介なジレンマや課題を対処する方法を見つける能力 Howard Gardner (2005) Five Minds for the Future 前掲のBlogではそのことに触れて、 "I still endorse and value these three kinds of minds. But today, a quarter of a century later, I would prioritise the two other minds—ones that determine how we relate to other individuals. They include the respectful mind—the way that we deal with those with whom we come in regular contact; and the ethical mind—the way in which we deal with difficult, vexing dilemmas—ones that we cannot easily articulate and solve.” Howard Gardner (2025) Respectful mindとEthical mindを他の3つよりも優先するという考え。まさにこの時代を象徴していると感じました。 |
Author萩原 伸郎 Archives
10月 2025
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