世界のどこの学校でも学年の年度末はあわただしく忙しいものです。けれどもその時期がどの季節にあるかということは、子どもたちや教職員の心身の健康に大きな影響があると感じています。
Australiaの学校は12月に学年が終わるので、一年の中でも一番快適で日差しや風が心地よい中で多忙期を迎えます。そしてその先にはクリスマスと長い休みがあります。一方の日本では寒く冷たい季節の最中に大きな試験や年度末の仕事が重なってやってくるので、当事者にはお気の毒なことだと感じてしまいます。 私たちの活力と感情(気分)の状態を4つに分類する診断法があります。どれが今の状態をあらわしているでしょうか。 質問です。
“The survival zone is when your energy is high, but negative. When we feel threatened or devalued, control of our nervous system shifts from the prefrontal cortex to the sympathetic nervous system and we move into fight-or-flight mode. People in this zone are anxious, impatient, irritable, fearful, and self-critical.” Tony Schwartz (2022) Harvard Business Review 「サバイバルゾーンとは、活力は高いけれども精神状態が良くない状態のことです。 私たちが脅威や軽蔑を感じると、神経系の制御が前頭前野から交感神経系に移行し、闘争・逃走モードに移行します。 このゾーンにいる人は、不安、焦り、苛立ち、恐怖心、そして自己批判的になります。」 折しも人々を不安にさせる材料がたくさんある中で、精神的な安定を保つことは一層むずかしくなるでしょう。そこで、多くの子どもたちや先生方がこの状態にいるのではないかと予想されます。一方で、多くの人が自分なりの対処法をいくつか持っているのではないかとも推測しています。 昨年4月からの新しい環境の中で定着した習慣をご紹介します。まず、月曜日から金曜日までをひと区切りにしてそこに集中すること。金曜日にはmental bonusを用意します。そして週に一回は学ぶ時間、何かを吸収する時間を持つこと。さらに、一週間の周期の中にいくつかの創造的な作業を入れることを心がけています。そうすることで survivalやburnout の状態に陥ることをどうにかまぬがれています。
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土曜日の朝に聴いていたpodcastの中に興味深い指摘がありました。
“There is a new wisdom that is growing in the 2020s, that it's not either/or, but it's both/and, that if we do look after people, well, they will perform better.” Sir Anthony Seldon 「2020年代には、どちらか一方ではなく、両方であり、人を大切にすれば、パフォーマンスは上がるだろうという新しい社会通念が育ってきています。」 質問です。
両方とも可能だという考え方や習慣の実例としてすぐに思いつくのは、COVIDの影響が出始めた2020年から急速に広がった仕事や会議の仕方の多様性でしょう。大きな変化ですが、公共性の高い学校現場では具体的な改革は少なかったようです。教職員の勤務形態を個人や学校単位で決めることは非現実的という認識が一般的だったのでしょうが、決して不可能ではないと私は思います。 両方とも可能だということ、選択肢があり子どもたちに選択権があるという考え方や実践は、数年前から提案されているStudent AgencyやCo-agencyの考え方につながっています。そしてこの過程を通して、子どもたちが非認知能力を豊かにしていくことは証明されています。 迎合ではなく学習者の権利として、学習や評価の内容、方法、基準について話し合い複数の選択肢が常に存在するという学習環境を創ることを2022年の目標にしたいと考えています。入学のための選考方法も決して例外ではないと思います。 先日12年生が卒業写真の予行練習?をしていました。4月からマスクをつけた顔しか知らないので、マスクのない顔を見ていったい誰なのかわからないという不思議な体験をしました。マスク着用の義務、つまり選択肢がないことで学校の安全を保つことができています。 2025年までに国内で販売される新車はすべて排気ガスを出さない車というNorway政府の最近の決定や、同じく2025年にはたばこの販売が禁止されるNew Zealandの方針にあるように、どちらか一方を敢えて決めるという決意も十分に理解し共感することができます。 昨年末にお届けしたIdeasでは「希望」について振り返ってみましたが、2022年を迎えてさらに「希望」について考える機会がありました。
“It’s not a warm, fuzzy emotion that fills us with a sense of possibility. Hope is a way of thinking—- a cognitive process.” Brene Brown (2021) Atlas of the Heart 「それ(希望)は、可能性を感じるような、温かくてぼんやりした感情ではありません。希望とは、考え方のひとつであり、認識プロセスなのです。」 その認識プロセスは3段階、goals, pathways and agency、から構成されるという説明がありました。実際に私たちが思い描く「希望」を例に調べてみましょう。 質問です。
自分が学校に通っていた頃に描いていた希望を思い出してみると、実現しなかったものは①と②が欠けていたことに気がつきます。そして、社会人になってかなわなかったものは、主として③が欠けていたことに気がつきました。同時に、実現しなかったとは言うものの、ある一時期にその希望に向かって努力した過程や味わった敗北感や挫折感は貴重な体験として自分の中に蓄積され、その後の機会に活かされたような感覚もあります。 “Children with high levels of hopefulness have experience with adversity. They’ve been given the opportunity to struggle, and in doing that they learn how to believe in themselves and their abilities.” Brene Brown (2021) Atlas of the Heart 「希望にあふれる子どもは、逆境を経験したことがあります。苦労する機会を与えられ、その中で自分自身と自分の能力を信じる術を学んできたのです。」 子どもにとっての逆境を考えると、3年目に入ったこのPandemicやもうすぐ始まる入学試験なども含まれるかもしれません。それらをくぐり抜けて育つ子どもたちに「心に太陽を持ち、くちびるに歌を持つ」ようなたくましさが育つのでしょう。大人の役割は、現実を子どもたちに合わせるのではなく、直面する現実に子どもたち自身が適応できるように育てることにあります。子どもたちへの一貫性のある接し方と過保護ではない支援を心がけたいと思います。 |
Author萩原 伸郎 Archives
8月 2024
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