昨年のChallenge Based Learningのあるgroupが2学期10週間の最後になってようやく企画を立てたprojectは ’IT With You And Me’ 地域の図書館でITの相談を受けて援助するというものでした。結局実施することができたのは3学期が始まる7月末からで、彼らの履修したCBLは既に終了していました。称賛すべきは、このgroupは半年間週1回のIT相談を続け、さらに10年生になっても今年の上半期も継続したことでした。
後進に譲るということで「引退」し、新しく組織した9年生の有志が引き継ぎました。この数週間は新membersと一緒に図書館に行って様子を見ています。Leader格の生徒はprogrammingを独習しているかなりの実力者です。 この日図書館で待ちかまえていた男性の質問は新しく購入したSamsungのsmartphoneについてでした。ガラパゴスケータイからupgradeしたものの設定の方法もappsについてもまったくわかりません。売ることだけにしか関心のない販売員と、履き古した靴を捨てて新しい一足を買うような軽い気持ちで購入した消費者の双方の無責任が引き起こした問題を、この生徒は丁寧に親切に根気強く説明を続けます。その途中、男性が顔を上げ50歳以上も年下の「救世主」をまじまじと見て呟きました。「こういうことをどこで習ったの。」 隣のtableで待っていた女性は10年以上も前のSony Vaioを広げました。知り合いから買う予定でいるのだがどうやって文章を書けばよいのかわからないと困っています。別の生徒がapplicationを起動しようと試みますが、まったく使い物になりません。「この中古品を買うのをやめてApple Storeに行ってiPadを見てきてはどうですか。何ができるか話を聞いてくると良いと思います。」と言うと、70代の女性はその忠告を手帳に書き留めました。その手帳にはITに関する語彙が数頁にわたって記入されています。そしてその一つ一つの意味を年下の先生にたずね始めました。USB, Skype, Bluetooth, ethernet, IP Address, router、続々と出てきます。この元教師の女性はvolunteerとしてliteracyを教えているとのこと。言葉の意味が理解できないことに焦りと不安があるのでしょう。 質問です。 ① ITの基本的な知識と能力の差が同時に生活の質の差をも生み出している事実にどのように対応すれば良いのでしょうか。 ② 子どもたちに地域社会の一員として活躍する環境を多く提供するには何が必要でしょうか。 個人的な問題ですが、総体的に見れば看過できない社会的な問題だと思います。それにしても、子どもが大人に教えるほうが余程丁寧で穏やかだと感じました。
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全校生徒と教職員のonline投票を経て選ばれたStudent Leaders (日本的に表現すると生徒会役員) が先週の木・金曜日に学校を離れて合宿をしました。ちなみにIdeas 33で紹介した立候補videoの本人はMusic Captainに選ばれました。新学年が始まる来年2月から本格的に活動するためのteam作りと年間重点目標や方針などを話し合います。
木曜日の放課後に合宿先をのぞいてみました。夕陽が照らす気持ちの良い地面に座り込んで活発に話し合っているところでした。どうやら2018年のthemaはRISE (Respect, Inspire, Shine, Evolve)に決まったようです。言葉の響きと意味に共鳴しました。そして来年度もきっと良い1年になるという予感がしました。 皆と楽しく夕食を食べて帰路につきました。牧場を突っ切る漆黒の田舎道を運転しながら、先日東京の高校生と接していた時も感じたことと同じ感情が湧いてきました。それは、私たち教師は生徒たちの前に立って絶対者のように振る舞いますが、日々様々なことに気づかせてもらい、教えてもらっているのはこちらの方だということです。純粋に学校やそこに通う人々のことを考え、今よりもさらに良い学校にするために熱く真剣に議論する若者たち。選挙の倍率は4倍近くになるので、残念ながら選ばれなかった生徒たちも多くいますが、彼らも同様に学校のために自分の時間と労力を捧げる心積もりがありました。 質問です。 ① 10代の子どもたちに自分だけでなく他人をも大切にする心情を育てること、全体の利益のために努力することの重要性を気づかせ行動させるにはどんな環境が必要でしょう。 ② 私たち大人は家庭や学校・地域でどうすれば子どもたちに公共心など価値の高い行動の見本を示すことができるでしょうか。 9年生のChallenge Based Learning では Start Your Own Business の起業体験は9月末で終了しましたが、一つのgroupは癌研究所への募金を可能な限り増やしたいと持続しています。先週校長に協力要請のmailを送りました。 ”My CBL group is conducting a fundraiser to raise funds for Cancer Council Australia to help those less fortunate than us. As you are principal I was hoping you would please help us with advertising and promoting our cause, it would be appreciated immensely. This would be accomplished by spreading the word and encouraging staff members plus students to donate as little as $1 towards our raffle, which will be happening on the deck outside the PC Office tomorrow at lunch time. This would help greatly for as principal you are held in great respect and your word is valued amongst staff and peers alike more than Max's Mail notifications by a Year 9 student. Thanks heaps.” 一体この生徒たちを動かしている動機、信念、情熱は何だろうかと再び考えました。 課題解決型学習の成否を左右するものは、経験的・実践的学習を通して生徒たちがいかに「課題」と向かい合うか、つながるかということにあります。そのためには「課題」が様々な情報や今日的な問題の中から選び出されるのが常套手段ですが、落とし穴があります。
そのような「課題」は社会の課題ですが、学習者の課題にはならない場合が多くあります。なぜなら社会的な問題に共感しても、学習者にとっては「解決する」必然性や可能性の薄い「課題」だからです。私は生徒たちに自分の問題から始めるように、見つめるように話しています。 課題解決型学習 Challenge Based Learning (CBL) を実践している都内の高校に先週うかがいました。2年生全員を対象としたworkshopは私のdesign不良で生産性の低いものになりましたが、その後のgroupごとの話し合いでは生徒さん方の熱意と意欲に圧倒されました。 質問です。 ① 小学校1年生から知識注入型の教科学習に慣れきった子どもたちにとって、課題解決型学習はどんな意味があるでしょう。 ② 課題解決型学習をすすめる際に、教師にはどのような視点や能力が必要とされるでしょうか。 進路指導が本当に自分の将来の方向性を導くものなのかという疑問。授業に集中できないのはなぜなのかという疑問。英語を習うだけではなく日常的に使うような環境がないという問題。それら日常的な「私」の問題が話し合いを通してCBLの課題として再認識されました。 最終下校時刻になるまで話し合いを希望するgroupは途切れませんでした。そこで、昨日もその高校にうかがって積み残してしまったgroupと話し合いました。最後に現れたのはmemberが帰宅してしまって一人だけで順番を待っていた生徒さん。教育に関心があって、日本の教育や人材育成に疑問があるということを明確に伝えてくれました。 一体これらの生徒さん方を突き動かしているものは何だろう。一般的な数字による評価が出ないCBLにこれほど多くの生徒さん方を真剣にさせているものは何なのか。担当されている先生方、この学校の文化や価値観などの目に見えない力を感じると同時に、生徒さん方の伸びやかな人間性と自分にとって良いものを感じ取る感性に感動しました。こういう若者がいる国の将来は明るいと感じました。 The aims of education are to enable students to understand the world around them and the talents within them so that they can become fulfilled individuals and active, compassionate citizens. Ken Robinson (2015) Creative Schools |
Author萩原 伸郎 Archives
10月 2024
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