新学期が始まって4週目に入りました。この時期、生徒たちの会話の中身はとても興味深いものがあります。第1週目、朝雑談をしているとある生徒が “We don’t learn anything useful at school” とつぶやきました。いつも穏やかにほほ笑んでいるこの生徒にしては爆発的な発言です。反芻しながら確かにその通りだと思いました。
各教室で新しい教科担任の先生たちとの一通りのやり取りや学習活動を体験すると、生徒たちの様々な「感想」が休み時間などに聞こえてきます。たいていの場合、感想は不満に変化していきます。生徒たちは慣れ親しんだ去年の先生のやり方や教室の雰囲気と現在のものとを比べているのです。教師たちからも新しい教室の生徒たちとのhoneymoon期を終えて、態度が悪い、やる気がない、私語が多いなどの不満が吹き出します。生徒たちの言動をとりあげて、希望に満ちた楽しいはずの新学期を台無しにしています。感情や気持ちを態度で表してくるのは教師にとってはむしろありがたいことで、何も外に出さない生徒たちも多くいるということを忘れているようです。 質問です。 ① 目の前の子どもたちが様々な「変化」に対して順応性があるかどうか、何を感じているかどうやって認識していますか。 ② 子どもたちとつながっていないと感じたとき、子どもたちが心を開いていないと感じたときどのように対応しますか。 「生徒たちのことを第一義に」という理念はよく言われることですが、それに共鳴するということと実際に教室で実践することにはかなりの隔たりがあることも事実です。教師としての立場からのみ生徒たちの言動を見るのではなく、立ち止まり、どうしてなのか冷静に振り返れば、いろいろな理由が見えてくるはずです。 一方で、新しい出会いを目を輝かせて喜んでいる生徒たちや教師たちもたくさん見かけます。そのような教室では、お互いが信頼関係を築き、目標や目的意識を共有し、各自が努力すると同時に仲間どうしが励ましあうような学習環境が生まれてくるでしょう。すると毎時間密度の濃い学習活動を生み出し生徒たちは高い学習成果を達成していきます。 この違いを生む理由を教師の側から考察すると、生徒たちを引きつける人柄、生徒たちへの思いやり、全体を見ながらも一人ひとりの生徒を観る力、的確な助言を適時に適量をそっと出す能力、そして自分の感情を常に安定した状態に保つ能力を持っているかどうかなどが考えられます。これらの能力・知性をEmotional Intelligence (EI あるいは EQ) と呼びます。当然のことながら、教師や指導者・管理職のEQが高ければ高いほど生徒たちや組織・社会に有効なので、世界中でその重要性が認識され始めています。教育実践研究講座でも近々扱う予定です。
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関東地方で大雪が降って帰宅時の交通機関が混乱した日、遅めの夕食を宿泊先の近くのラーメン屋ですませることにしました。厨房に向かい合う席をとって注文をすると、受けたのは中国系の店員でした。しばらくして隣に座って餃子定食と生ビールを注文したお客はインド系の人でした。外の雪とは裏腹に何か温かいものを感じました。
新学期が始まった先週の木曜日、Kolbe Collegeに東京から高校生がやってきました。課題解決型学習Challenge Based Learningで代表に選ばれた二組です。翌日の金曜日からKolbe College のCBLのclassで成果を発表してもらいました。そして今日は最後の発表の機会でした。回を重ねるごとに表情も豊かになり自然に話しかけるように発表しています。iPadに載っている原稿を読むことはなくなり、短時間のうちに二組の発表はまったく別のものになりました。 すべてをやりとげた後の振り返りの時間に、東京の高校生から技術的なことを達成した喜びの感想が次々にあがりました。今回の経験のすべてから何を感じとったのかという質問に換えると、輝くような言葉が出てきました。そのひとつ、「みんな同じ人間なんだなと実感しました」。雪の日のラーメン屋でふと感じたことと共通しています。 質問です。 ① 学習活動の振り返りを形式ではなく本質的な意味のあるものにするために、教師が考えるべきことは何でしょうか。 ② 表面には見えない、出てこない、子どもたちの努力や苦心を、教師はどうやって見つけだせば良いでしょう。 「失敗しないと分からない事がある」「わからないことはちゃんと聞く」「あらゆる場面で、自分の思いや行動を深く考え直す」「常に様々な事から刺激を受けてそれを自分のものにすること」などのかけがえのないお土産を持ち帰ってもらえそうです。 Kolbe Collegeの生徒たちからも良い感想が出ています。充実した時間を共有した証です。
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Author萩原 伸郎 Archives
8月 2024
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