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迎え入れるということ

21/5/2019

 
​日本の学校には独特な教育活動や約束事・慣習があるので、日本国内に増えている日本語を母国語としない子どもたちや保護者にはすぐには理解できないことが多いと思います。一方、学校の先生方も個々に説明をしなければならない場面が多くなっていることでしょう。どちらの立場でも、共通言語が確立していない段階でのやり取りは、困難を極めることは明らかです。

公立小学校で勤務されている先生方から、新しく地域や学校に加わった海外からの人々に向けた学校行事や持ち物などを説明する映像を制作する依頼を受けました。仕事の意義に共鳴して、週末の奉仕活動としてつくリ始めました。

この制作の全工程を楽しんでいるのですが、最近先生方から送られてくる「要求」に疑問を感じ始めています。「ここはこうして」という意見を聴くことは大切なことで、可能な限りお応えするべきだと思いますが、受けとる内容は賛同するには難しい日本の学校の管理的な体質や全体主義的な価値観が現れているからです。

質問です。
  1. 給食の準備が終わるまでマスクを着用すること、食後に歯を磨くことなどは学校生活の中での必要な衛生的習慣として子どもたちに定着させるべきことでしょうか。
  2. 新しく地域に加わった子どもたちや大人が、常識的な判断や生活習慣、現代的な学校生活の体験がないだろうという判断をすることは本質的に正しいことでしょうか。 

数年前、ようやく安住の地を見つけて移り住んだ一家の子どもが学級に転入してきました。冬の金曜日の朝は、教室でみんなと温かいミロを飲むことになっていました。その転校生は最初の金曜日の朝、ミロを飲んだ後率先して後片付けを始めました。気がつくと、みんなの紙コップを集めて流しで洗っています。そして布巾で拭き、重ねて戸棚にしまいました。それを見ていた他の子どもたちも私も、その子に向かって何も言いませんでした。

今月末にある私立学校連盟のCross Country大会に向けて朝7時から練習をしています。9年生のひとりは回教徒で、今はRamadanの期間です。それでも休まずに練習を続けています。飲まず食わずの苦行であることは他の子どもたちも知っています。けれどもどちらも取り立てて何も言いません。

新しい人を迎え入れること、新しい環境・社会に加わることは双方の思いやりや心遣いが必要であることはいうまでもありません。とりわけ、迎え入れる側はこの繊細な時期に自分たちのやり方だけを主張して強要するようなことは避けたいと思います。

教科書を子どもが創る小学校

9/5/2019

 
​『教科書を子どもが創る小学校』という題名の本は1982年に出版されました。生活に根ざした学習の実践記録がぎっしりと詰まったこの本を、その翌年に当時勤めていた公立小学校の校長先生に、ここに書いてあるような実践をしたいと考えているのでこれを読んでみてくださいと手渡しました。ずいぶん唐突なことをしたものだと思います。しばらくして校長先生からこの本が返ってきました。「私がすべて責任を負うから、あなたのやりたいことをしてみなさい。」という言葉も付いてきました。

それに勢いづいて、次の準備としてこの本を学級のすべての保護者に回し読みをしてもらいました。これから始まる生活体験学習についての理解と協賛を仰ぐ必要があると考えたのでした。こうして2年2組の学級では様々な活動や労働を通した教科書にない深い学習が始まり、子どもたちが卒業するまで5年間続きました。

先月ある研修会で、教科書を中心とした学習の対極にある課題(問題)解決学習を取りあげました。日本には生活や労働と学習が結びついた教育実践があったことを示すために、この本から一節を引用しました。「教師には一般に三つのとらわれがあるようである。自分は教師であるというとらわれ、教科というものが本質的に存在していると思うとらわれ、教科書の内容を逐一教えこまなければならないと思うとらわれの三つである。これらのとらわれを、何はともあれ棄ててことに当たってみようではないか、というのが私たちの考えるところであった。とらわれがある限り、子どものなかにある学習の芽を見つけることも、ましてそれを育てることもできないだろうからである。」

すると、ひとりの参加者の手があがりました。「その本に出てくるオペレッタを作った子どもは私です。私はその小学校に通いました。」

Internetで検索して調べるという手段がない時代に、限られた資料をもとに手探りで実践した一連の課題解決学習や生活体験学習のきっかけを作った『教科書を子どもが創る小学校』。伝統的な学習内容、方法、評価を取らない、子どもを中心とした豊かな学習体験を提供し続ける学校とそこでの実践。自分のいる環境では不可能であることは明らかでしたが、その学校の実践に近づくことが究極の目標でした。

賛同者の輪をじわじわと広げて試行錯誤を続けながら独自の実践を展開することができたのはこの本があったからでしょう。教師として歩み始めた当時の自分に大きな影響を与えた一冊の本、そこに出てくる学校に通い様々な貴重な実体験を持つ方との巡り合わせは、まさに奇跡的な出来事でした。その方が音楽の教師になられたということは偶然ではなかったとも感じました。

    Author

    萩原   伸郎

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