2020年の最初の1か月に何回も目にし耳にした言葉が “vulnerability” (もろさ、脆弱性)です。人があまり表面に出さないようにしている感情、考え、体験談などを表に引き出す、あるいは他の人に伝えるというもので、そうすることで人間関係を密にしたり組織内に肯定的な文化を生み出すことに効果があるというのが多くの主旨です。
自分自身の通常の言動や心持ちを客観的に振り返ると、自分の弱さやもろさを出すよりも隠す傾向が強いことに気がつきます。ところが様々な研究から興味深い結果があらわれています。 Aが「今までずっとやってみたいなと思っていることがありますか。なぜまだそれをしていないのですか。」とたずねると、Bからは「意志が弱いから」「時間に余裕がないから」などのような答えが返ってきます。するとそれを受けたAが「実は自分も意志が弱くて__がまだできないんですよ」のような返答をします。このような短いやりとりを通してAとBの意識が寄り添い始め信頼関係が生まれてくるのだそうです。 質問です。
今週の水曜日、今年から私たちの学校に加わった先生たち7名にオリエンテーションを実施しました。この種の催しは主催者側が伝える必要のある「情報」がたくさんあると思い込むので、必然的に一方通行の情報過多の会になってしまいます。私の担当の時間には、一切の伝達を退けて、前述のような弱さやもろさにかかわる7つの質問をそれぞれ異なるペアでたっぷり時間をかけて問答してもらいました。 翌日の全教職員の新年度の初会議で、校長が担当したテーマでも私たちの弱さやもろさに焦点を当てたグループディスカッションでした。私も含めて皆が、用意された時間では短すぎると感じるほど内容の濃い時間になりました。そして言葉ではうまく表現することはできませんが、胸の中に一つの灯りが灯ったような感覚を得ました。 もしこれらが通常の職員会議的な流れで進んだとしたら、疲れと憤りと不満を全身に溜め込んで校門を出ることになったでしょう。
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Author萩原 伸郎 Archives
8月 2024
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