PISA 2015 の結果が6日に全世界で発表され、日本の各報道機関も最新の結果について報道しているようです。私がこれまで目を通した各国の報道は、どれも担当記者が手っ取り早く要点をかいつまんで記事に仕立て上げ、良しにつけ悪しきにつけ、自国の教育制度や学校教育の効力について単純な結論を導き出しています。
本当に未来を担う子どもたち、そして世界の進むべき方向に責任を持つならば、400頁を超える OECD の報告書の隅々まで目を通すのが必要で、そこから論説なり記事を組み立てるべきだと強く感じます。 とりわけ私が発表の前から関心が高かったのは移民の子どもたちがどのような結果を出したかということです。OECD は移民の受け入れの程度を国ごとに8つに分類しています。日本は当然のことながら8番目の「移民の児童が全人口の2%未満」という group に入っています。この点についての分析は機会があった時に述べたいと思います。 恐らく日本の報道では取り上げられなかった今回の結果の中で、極めて重要なことがありました。それは報告書の 223頁にある Percentage of resilient students です。これは生徒とその保護者の経済、社会、文化的な生活水準を4段階に分類し、その最下位1/4に属する生徒が Science literacy test でどのような結果を出したかという分析です。日本はその最下位1/4の生徒のうち49%が上位1/4の成績を出しています。これは Singapore と並んで世界第4位です。(OECD 72カ国の平均は29%) 生徒たちの基本的人権が献身的な先生方、学校を取り巻くたくさんの人々の努力で守られ、その生徒たちの能力が育まれているという事実。これは国家として誇りにするべき事実だと思います。これこそが、数学、読解力などの国際順位よりも大切な、公教育にたずさわる人間がこだわるべき真髄なのではないでしょうか。 今回の結果を受けて世界の教育研究者がそれぞれの視点で感想を述べています。目にとまった2つの意見があります。 一つは、2015年の PISA の結果のみを見るのではなく、test を受けた生徒たちがこれまでどのような学校教育を受けてきて、どのような PISA の結果を出したのかを調べるべきだという意見。 もう一つは、韓国などアジアの国の生徒たちは放課後の塾通いが一般化していて、そのような制度がない他国の生徒たちとは単純に比較はできないという主張。どちらももっともなことで、さらに付け加えるならば、私は被験者15歳の若者たちの「幸福度」や「自己達成感」も気になるところです。 それにしても日本の担当大臣の comment は極めてお粗末なものでした。
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Author萩原 伸郎 Archives
10月 2024
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