第四回研究講座では一般的に使われる「学力」という言葉について話し合いました。明らかになったことは、「学力」の定義が曖昧であることです。教育行政に携わる人々、学校関係者、教育産業に関わる人々、保護者、子どもたちが使う「学力」という言葉は単に「国語と算数・数学」の力を表すように取れる節がままあります。文科省が実施する「全国学力調査」はその典型的な例です。狭義の「学力」の定義と安易な使用は OECD が3年ごとに実施している PISA (Programme for International Student Assessment) の和訳「国際学力調査」にもあらわれます。原文には「学力」にあたる言葉はありません。
欧米豪では学習を可能にする基礎的能力を Literacy and Numeracy と表現します。豪政府が毎年実施するテストも NAPLAN (National Assessment Program - Literacy and Numeracy) と呼ばれ、教科の「国語と算数・数学」とは一線を画しています。実際にMaths と Numeracy はどこが違うのでしょうか。 National Numeracy (2013)には、簡潔に違いが 述べられています。 Numeracy can be seen as the ability to use maths in real life, for example; problem solving, following a recipe or reading a bus time table. Maths can be seen as equations that we can use beyond numeracy and everyday things such as; calculus, quadratic equations and statistical analysis. 学習した算数・数学的な知識と技能を実生活の中で使う能力を Numeracy と呼び、学習指導要領にある「算数的活動」と同意とみて良さそうです。一方の Maths はより抽象化された事象を扱い絶対的な正解を求める学習活動をさしています。 考察の視点を挙げます。 ① 「学力」という言葉の安易な使用、とりわけ狭義の定義は、どんな潜在的な問題があるのか。② 「Literacy and Numeracy」にあたるような日本語の言葉は何か。 ③ 「学力」という漠然とした表現ではなく、人間の能力を広くとらえるより適切な表現は何か。
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Author萩原 伸郎 Archives
8月 2024
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