これまでに訪問した世界各地の学校の授業は45分から60分を一こまとしています。そして、その一こまに1教科を割り当てるということも世界共通の慣行です。テレビ番組は30分か60分、映画は2時間、というように時間の枠が不文律化されています。この標準化には、人間の行動に直接関係していながら、食事の時刻や睡眠時間と同じような必然性や科学性を見出すことはできません。
教師になる前から、一日を通して同じ課題に向かう学習形態や多領域にまたがる複合的な課題に取り組む学習活動の構想がありました。そして公立小学校でその構想を具現化しました。一枚の絵を描きあげることに三日間連続で取り組んだこと。学級で飼っていたカルガモとアヒルのつがいが産んだ卵を孵卵器で温め、いよいよ卵の中からコツコツと音が聞こえた日の一日はその観察活動と記録作業に使い切ったこと。学習活動が感動体験と直結することを学びました。 物理的な枠を外した自由で人間的な学習活動は中等教育学校でも必要かつ可能だと思います。昨年5月から、新しい課題解決型学習案を練り始めました。個々の教師に説明し大方の理解と賛同を得ることができました。8年生を対象としているので ”Innov8or” という名前をつけました。 Innov8orの根幹を成す原理は7つの言葉でまとめました。Creativity, Autonomy (自主性、自律性), Authenticity (真正、確実性), Critical Thinking, Communication (言語による意思、思考、感情の伝達と議論), Collaboration, Cross Curricula (多領域性)。これに基づいて学期ごとに一日、年間4回の創造と学びの「行事」を先生方に自由にdesignしてもらいました。先生方に創ってもらうことで先生方自身の創造力の練磨と学習への考え方や習慣の転換の契機になりました。 質問です。 ① 子どもたちにとって学習活動の中で短ければ短いほど良いもの、その逆に、長ければ長いほど良いものは何でしょうか。 ② 教科という枠組みを外すと、学習者である子どもたちにどのような利点があるでしょうか。 先生方が選んだ学習活動はそれぞれの得意な分野を反映しています。一日の流れと内容を検討する中で、先生方にとってむずかしかったことが二つありました。その一つは「教える」要素を排除することです。例外なく最初に出された案には、先生方が学習活動の重要な事項としてとらえている内容を「教える」場面がありました。私はその「教える」ことの意味、目的、必然性を問い続けました。 二つ目は生徒たちを釘付けにする最初の「質問」を磨き上げること。「質問」の良し悪しが生徒たちの活動への意欲、直感的楽しさ、目的意識に影響を与えます。この記録映像は3学期のInnov8orの様子です。一人ひとりの生徒からの感想に裏付けされ、Innov8orは来年も実施します。
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Author萩原 伸郎 Archives
8月 2024
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