私たちの学校は年間を通して編入生を受け入れるので、世界各地の学校が出した成績表に目を通し、世界各地の先生方が書いた所見を読みます。
この作業を通してこんなことを感じています。 ① どの学校も成績表が大切な公的文書と認識し、最大限(?)の工夫をして作成している。 ② しかし、多くの場合それらを隅々まで読んでもその子どもの全体像はなかなか見えてこない。(学校によっては十数ページのBookletになっている場合さえある。) ③ 教科担当や学級担任の所見は、漠然とした全体像を語っているか、ある小さな出来事を拾い上げて一般化していることが多い。今後どのように学習を進めるべきかというようなfeedbackや、その生徒が日本の学校で学ぶ際に留意するべきことなどの申し送りの要素はほとんどない。 ④ 海外にある日本人学校が発行しているものは押し並べてお粗末なものが多い。 質問です。 ① 学校が定期的に出す成績表の形態や表記の内容などについて、子どもたちや保護者の視点に立ってどうあるべきかという議論や改善があるでしょうか。 ② 学校で勤務を始めてから、より良いfeedbackの出し方、commentの書き方について体系的、系統的に学ぶ機会があったでしょうか。 入学・編入書類の仕分け作業をしていく中で感じたことは、世界中のいたるところの学校で仕事をする先生方は、成績表に書く所見欄にどのような視点で何をどう書くべきかという研修や練習をしていないのだろうということです。 けれども時折、目の覚めるような、あたたかく、丁寧で、微笑みながら書かれたのだろうと直感できるような所見に遭遇することがあります。そのような輝く所見を読みながら、この先生は教室でも一人ひとりの子どもたちを大切にしながら、すばらしい学習活動を提供されているのだろうと容易に想像できます。 どのような職であっても、専門性や仕事への誠意というものは、何が大切なことなのかを直感的に理解している人で、この場合受け手が誰であっても、つまり、直接会う可能性があってもなくても丁寧な仕事をする人なのだろうと思います。 ところで、Australiaの学校に勤務し始めた頃、自分が書く所見に自信が持てませんでした。ある時ある同僚の所見を目にして、その差に愕然としました。それ以来、彼の所見をArchive室でひたすら写しました。模倣も専門性を上げる一つの方法だと思います。
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Author萩原 伸郎 Archives
8月 2024
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