12年間共に仕事をした校長は、保護者や教員からの不平不満や苦情にはすぐに応答をせずに相手を焦らす作戦に出る時がありました。そんな時に使った表現が “Let him stew on that.” 「ほっておこう」という意味ですが、直訳はその問題を煮込ませておけということで、おいしいシチューができるように本人が問題の解決を見出すかもしれないし、人によっては怒りが煮え立つかもしれません。
私たちが仕事を通して関わり合う相手とのやり取りは、速く処理をすることを期待されている場合が多いのは事実でしょう。そして、速ければ速いほど相手からの評価が高くなるだろうという予想も持っています。けれども即答や意味のない謝罪を避けて、時間をかけて話し合うことや結論を導き出すことの大切さに気づくことがあります。久しぶりに ’stew’ に触れました。 “Just as a good stew takes time to simmer, a thoughtful conclusion or question may need space. Resist unnecessary urgency. Map a process that will allow you to solve a problem over several days or longer. Dig into it initially then reflect on what you learned and what you should have asked. The questions you formulate in quiet reflection may be more powerful than those posed in the moment.” John Coleman (2022) Critical Thinking Is About Asking Better Questions 「おいしいシチューが煮えるまで時間がかかるように、考え抜かれた結論や質問には時間が必要かもしれません。不必要に急ぐ必要はありません。数日またはそれ以上かけて問題を解決するためのプロセスを描く。そして、何を学び、何を問うべきだったかを振り返ります。静かな内省の中で立てた質問は、その場で立てた質問よりも強力なものになるかもしれません。」 質問です。 ① 時間をかけて丁寧に仕事をすることと、効率よく作業をして量をこなすことの両立は可能でしょうか。 ② 私たちは新しい物事を学習すると、それを自信をもって実行したり実際に使ってみたりするには一定の時間が必要なことを経験的に知っています。その当たり前の事実を、子どもたちの学習活動と評価にも応用しているでしょうか。とりわけ一連の学習活動と総括的評価の間に十分な時間を確保しているでしょうか。子どもによって定着に必要な時間が異なることを認識しているでしょうか。 映画館、劇場、コンサート会場で終わる直前や、終わるとすぐに席を立つ人がいます。家でStreamingで観る時はどんな行動をするのでしょうか。余韻というおまけがついているのにもったいないと感じます。 前述の校長さんからワインについていろいろなことを教わりました。そのひとつは、良質のワインを飲んだ後にはグラスに良い香りが残ることです。本当に良いものには、いつまでも心の中に余韻を残す力があります。それを感じるにはゆったりと過ぎる時間を持つことが必要でしょう。
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Author萩原 伸郎 Archives
8月 2024
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