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ポテトサラダ

10/7/2020

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教師になりたての頃に読んだ評論の中に、日本全国どの家庭でも即席で作った同じ味のカレーを食べているのはおぞましいことだという指摘がありました。教育の画一化の問題が盛んに議論されていた時期でもあり、社会が認める価値観や人々の嗜好までもが知らないうちに画一化されているのだなあと漠然と感じたことを覚えています。

これは効率化と標準化を第一の目標とする工業型社会が浸透することの実例でしょう。画一化という点で観ると、豊かさ、美しさ、幸せ、成功というような抽象的な価値観は虚像が実像として共通認識される社会になりつつあるように感じます。現状はさらに悪化していると言えるかもしれません。

料理家の土井善晴さんは正反対の価値観をお持ちです。「ポテトサラダを混ぜないことを、「触らんでよろし」と言うてるのです。お店は、均一なものを作らないと叱られます。こっちにきゅうりが多い、ハムが少ないではあきませんからね。そういう商品文化が家庭にも入ってきているのです。そもそもレシピというのも、均一な、同じものを作るためにあるんです。でも、同じものを作ることに、本当は価値はありません。手作りの魅力は別のところにあります。民芸のものもそうですし、本当にいいものを作るために、「均一で同じ」であることは必要じゃないし、全く重要じゃない。家庭料理はばらつきがあってよいのです。」(暮しの手帖 2017年)

質問です。
  1. 私たちの学校や教室で「手作り」のものと自信を持って宣言できるものは何でしょうか。学ぶこと教えることはいつでもどこでも誰にとっても「均一で同じ」である必要があるでしょうか。
  2. 学校は「均一で同じ」ような子どもたちを育てようとしているのでしょうか。それでは、教師や学校が子どもたちに期待する行動、態度、進路についてはどうでしょうか。

土井さんは純粋に料理家の視点で語られていますが、その内容には普遍性があります。「味つけについてですが、まず私は基本何もせんほうがええと、どっかで思ってるんですよ。」という部分はRousseauの自然主義に共通しています。「結局、わたしたちの味覚は単純であればあるほどいっそう普遍的なのだ。(中略)子どもにはできるだけその最初の好みをもちつづけさせるがいい。食物はありふれた単純なものにし、口をあっさりした味だけになれさせるように、そして好き嫌いが生じないようにすることだ。」(Emile 1762)

NETFLIXのChef’s Tableというdocumentary seriesには創作に一種の哲学を持つ料理人が出てきます。その中で異彩を放っているのがGrant Achatzというchefです。彼が最初に持つ発想が常識の枠を越えています。彼のように食材(学習内容)を調理してお客様(子どもたち)に出したら、食事をする(学習をする)ことがまったく別の次元の体験になるだろうと思います。

混ぜないポテトサラダを作ってみました。おすすめです。
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    萩原   伸郎

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