都心の自然環境が乏しい住宅密集地の小学校です。3年生の理科の教室に入りました。窓際には子どもたちが牛乳パックを半分に切って作った「植木鉢」があります。双葉が顔を出しているものもあります。別の入れ物には何やら大切なものが入っているようです。
先生が「観察カード」を子どもたちに配りました。この時間に教室の中で育てている植物や生き物を観察する様子です。先生はその「大切なもの」を取り出しました。葉についたモンシロチョウの卵です。キャベツ畑もない地域で、卵を手に入れるのはたいへんだったことでしょう。そして子どもたちにとっても、日常生活では見ることが稀な貴重な「生き物」です。 先生は「まだ卵のままですね。幼虫になるのを待つ時間がないので、教科書の…ページを開けてください。」と指示を出しました。子どもたちがそのページをひらくと、2ページに渡ってモンシロチョウの卵から羽化するまでの写真が順に載っています。先生はそれを使って教え込みました。 質問です ① この理科の学習から子どもたちが学んだことは何でしょうか。そして失ったことは何でしょうか。 ② 本物の学習体験を子どもたちにふんだんに提供するために、学校や教師がするべきことは何でしょう。 5月の中旬、5年生の社会科では「低い土地の生活」という単元を扱います。この地域の小学校では同じ教科書を使っているので、どの学校でも教科書に載っている岐阜県海津市の地形、人々の生活の様子を「低い土地の生活」の典型例として知ることになります。 ほとんどの子どもたちが、おそらく先生も、行ったことのない場所について間接的、抽象的に学習していますが、まさにこの子どもたちが住んでいる地域こそが海抜0m地帯なのです。小学校社会科の一つの領域である地域社会学習を自分たちが実際に生活をしている地域について観察、調査、現状認識、解決策などのような直接的で構造的、創造的な学習活動に変える機会を逃しています。 中学校の支援学級、数学の教室です。ユニクロの広告を見ながら買う物を決めます。そして消費税込みの値段がいくらになるか調べようという作業です。先生が配ったのは広告の白黒コピーでした。少人数のこの教室にいる一人ひとりに十分な枚数の本物の広告を集めるのは簡単なことです。先生がその程度の準備をせずに、支援学級の子どもたちに向かい合うのは残念なことです。そして「1.08かければいいんだよ」と教え込まれて計算し答えを出した子どもたちは、一体何を学んだのか疑問に思いました。
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Author萩原 伸郎 Archives
12月 2024
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