Australiaの学校では子どもたちの学習、作業・活動、休憩時間などの場には必ず教員がいなければなりません。担当の先生がお休みで、教室で子どもたちだけが自習をしているという光景は絶対にありえません。
先週、あるクラスの補教に入りました。 担当の先生からの連絡メモには単元テストとありました。はじめの10分間は各自でテスト範囲の復習、そして40分間のテストという流れです。テスト開始の時刻になりそれぞれがデバイスからテストを開くと、クラスがざわつきました。約半数の子どもたちはこの技能を主とするテストの1問目からやり方がわからないのです。Semester Oneの成績の教務システムへの入力締め切りは今週水曜日に予定されています。 質問です。 ① クラスのすべての子どもたちが学習した内容を確実に理解していない、練習した技能が身についていない時に総括的評価をする意味があるのでしょうか。このテストが形成的評価だとしたら、担当者がテストの前にするべきだったこと、このテストの後にするべきことは何でしょうか。 ② このテストの結果がSemester Oneの評定計算に含まれるとしたら、今回の事例は、より高い評定を獲得する機会が意図的にあるいはシステム的に子どもたちから奪われしまっていると言えるでしょうか。 なぜこのようなことが起きたのかと問われれば、同じ科目を教えている先生との関係、他のクラスとの整合性、ぎっしり詰まったカリキュラムをこなすため、配当された時数の結果、などのオペレーションやシステムに関する理由があがるかもしれません。そして、子どもたちには十分に説明をした、練習時間も十分だった、理解していない・やり方がわからないのは子どもたちの意欲や集中度の問題、などの学習者に関する理由もあがるでしょう。 どちらにしても、教育の理念や哲学までに飛躍せずとも、教師として持つべき大切な観点や習慣が問われる事例だと思われます。Universal Designの視点ではどのような説明になるでしょうか。 ”Most curricula are designed and developed as if students were homogeneous, and the most common approach to curriculum design is to address the needs of the so-called ‘average student.’ Of course, this average student is a myth, a statistical artefact not corresponding to any actual individual. But because so much of the curriculum and teaching methods employed in most schools are based on the needs of this mythical average student, they are also laden with inadvertent and unnecessary barriers to learning.” David Rose (2014) Universal Design for Learning ひとつには、教育課程や指導法が実態のない「平均的な生徒」をもとに作成されていること、そのために無意識のうちに必要のない(本来は避けるべき)学習の障害を産んでしまっているという事実です。そして実際の評価デザインに際しては、次のような説明があります。 "Designing assessments using the principles of UDL requires a focus on providing alternate pathways to engage students, pathways to help them to build comprehension and understanding, and pathways that allow them to express how they have met the standard in flexible ways.” Carlin Tucker, Katie Novak (2021) UDL and Blended Learning 「UDLの原則を使用して評価を設計するには、生徒の興味を引くための複数の過程、生徒が解釈する力と理解力を高めるための過程、そして生徒が学習目的をどのように満たしたかを多様な方法で表現できる選択肢を提供することに重点を置く必要があります。」 これらに加えて時間、つまり学習計画の中のどこで、どのくらいの時間をかけて評価をするかについても子どもたちに合わせて設計する必要があります。これらのことを意識すると、学習評価は学習者と指導者のパートナーシップに基づいたものであることに気がつきます。 “Assessment is the driver of both differentiation (a teacher move) and personalisation (a partnership between the teacher and learner) in a blended learning environment.” Carlin Tucker, Katie Novak (2021) UDL and Blended Learning. コメントの受け付けは終了しました。
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Author萩原 伸郎 Archives
7月 2025
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