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勤務校で毎年楽しみにしている作品展がありました。7年生から12年生までがこの学年で取り組んだ多種多様な創作活動の成果が並びます。そして来場者へのもてなしも創作活動のひとつです。このイベントは、まさにCreativityの祭典です。(3分30秒のダイジェスト版はこちらです。これらの他にdigital media系やgameなどのprograming系の作品もありました。)
一つひとつの作品を見入ると、制作した子どもたちの声や表情が伝わってくるように感じます。制作の過程で工夫したことや期待通りに進まなかったこともあっただろうと想像しながらそれらの作品を鑑賞していると、どれもが堂々と胸を張って存在し、明らかにそこには見た目の完成度の良し悪しや他者との比較といった尺度は制作者にはないように感じられます。全体を鑑賞し終えてから、いわゆる普通教科の学習活動と本質的に何が異なるのか、あるいは同じなのか考えました。 質問です。 ① 子どもたちの学習活動への集中度、習熟度、達成感、Ownershipが創作活動を主とする教科と知識や理解、思考力を主とする普通教科に違いがあるでしょうか。 ② 教科を問わず、Creativityに必要な要素とその過程は何でしょうか。 子どもたちが創作活動に向かう時、まず成果物や完成品を見ること・思い浮かべることから始まります。この時点で子どもたちは学習活動の目的を明確に認識・意識します。次に先生からどのようなステップで進めば良いのか説明を受けるでしょう。その時に自分は何ができて、何ができないかを認識するでしょう。そしてどのようなサポートがいつ必要なのか自身で認識します。制作作業に入る前にはどのように進めば良いのか自分なりの計画を立てるでしょう。実際に制作が始まると、自分が活動しやすい進度で進めていきます。毎時間の終わりには進捗状況を振り返り、次にするべきことを明確に意識します。こうして作品が完成に近づいていきます。 子どもたちが制作の過程で自分は何ができないか、むずかしいか、理解できないかを認識した時にどのようなサポートを得ることができるかということが重要なポイントになります。これが心理学者のVygotskyが提唱したThe zone of proximal development (ZPD)です。自分ができることとできないことの間にZPDが存在し、教師、友だち、家族、資料などからのサポートを得て、できなかったことができるようになっていくという過程です。 ZPDによって子どもたちは一つひとつハードルを越えて思い描いている完成に近づいていきます。この過程があることで自分の学習や制作に向かい合いより強いOwnershipを持つことにつながっていきます。 こうして見てくると、創作活動が主となる教科だけでなく、普通教科でもこのサイクルは当てはまりそうです。具体的に考察してみると、学習単元の終わりに自分は何ができるようになるのか、何が理解できるようになるのかという学習の出口が普通教科では若干不明確の場合があるでしょう。さらに学習活動がどのように進んでいくかは、たいていの場合教師主導型の学習活動のために明確ではありません。そして学習の進度は自分のペースでとはならず、全体と合わせなければなりません。 これらの違いがあるものの、さほど大きな問題ではなさそうです。普通教科と芸術的教科とは学習内容も方法も根本的に異なるという先入観を捨てること。表現を換えれば、学習活動の日常の習慣を少し修正することで、創作活動が主となる教科のように普通教科も子どもたちの学習へのOwnershipを確保して、集中度や達成感を味わうことのできる学習活動が可能なのではないでしょうか。たとえば、学習活動の中にドリル的な反復練習ではなく、意味のある創作的な活動を加えることも一案です。 Comments are closed.
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Author萩原 伸郎 Archives
10月 2025
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