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Retrieval Practice

31/8/2025

 
北半球では夏休みが終わり、新しい学期が始まった、あるいは始まろうとしている時期でしょうか。久しぶりに会う子どもたちは休みの間に背が伸びていたり顔つきがかわっていたり、それらを発見するたびに成長期の人間を相手にする仕事に就いていることにおもしろさを感じると同時に、大きな責任を感じる時でもあります。


質問です。
① 学期の最初に子どもたちに何を話しますか。どんな質問をしますか。
② 休み前の学期で学習した内容を子どもたちは正確に覚えている、身につけていることを期待しますか。それとも忘れていても仕方がないという心構えを持ちますか。


学校での教育活動は「学習の科学」に基づいた実践が行われる必要がありますが、実際には非科学的な、言葉を換えれば旧態依然の慣習を継承していることが多いように思います。今日は学びの科学に基づいた実践例として Retrieval Practice (想起練習) について考えたいと思います。


"Retrieval practice is a strategy in which calling information to mind subsequently enhances and boosts learning. Deliberately recalling information forces us to pull our knowledge "out”and examine what we know. For instance, I might have thought that I knew who the fourth U.S. President was, but I can't be sure unless I try to come up with the answer myself (it was James Madison). Often, we think we've learned some piece of information, but we come to realise we struggle when we try to recall the answer. It's precisely this "struggle" or challenge that improves our memory and learning by trying to recall information, we exercise or strengthen our memory, and we can also identify gaps in our learning." Pooja Agarwal (2020) How to Use Retrieval Practice to Improve Learning


「想起練習とは、情報を意識に呼び起こすことで学習効果を高め強化する方法です。意図的に情報を想起させる行為は、学習者に既習知識を「引き出す」ことを強制し、自分が何を知っているかを明確にします。」


このRetrieval Practiceの理論に基づいて新しい学期の最初に子どもたちへの問いかけを考えると、「夏休みの間に何をしましたか」ではなく、「夏休みに学んだことは何ですか」が適切な問いになるでしょう。そして、学んだことをふたつ挙げてもらうと、子どもたちの思考をより活性化させることにつながるようです。まず最初に、先生ご自身が休み中に何を学ばれたのかをお話しされてからこの問いかけをすると、子どもたちにとってこの質問がより身近なものになるでしょう。


私は子どもたちに質問を投げかけた時に、Think-Pair-Shareという3段階を取ります。これもRetrieval Practiceのひとつですが、まず自分一人で考える・振り返る時間を与える、次にペアでその内容を共有し合う、最後にグループやクラスで発表するという手順で進めます。子どもたちのMetacognition を鍛え、心理的安全性を確保することに効果があります。お試しください。

Strategyについて

17/8/2025

 
先週は学校でStrategyについて話し合う機会がありました。ある目的を達成するために総合的に進められる計画や運用方法と定義すると、真に有効なStrategyはどうあるべきなのでしょうか。

“Competitive strategy is about being different. It means deliberately choosing a different set of activities to deliver a unique mix of value.”
“the essence of strategy is in the activities - choosing to perform activities differently or to perform different activities than rivals. Otherwise, a strategy is nothing more than a marketing slogan that will not withstand competition“ 
Michael Porter (1996) What Is Strategy? 

「対抗力のあるストラテジーとは、他とは異なっているということです。それは、ユニークな価値の組み合わせを提供するために、異なる一連の活動を意図的に選択することを意味します。」


質問です。
① 日本の学校には伝統的に教育方針や理念が掲げられていますが、 それらがVision、Missionと異なる点や共通する点は何でしょうか。
② 日本の学校で年度ごとに設定される「重点教育目標」のようなものと、ここで取りあげているStrategyと本質的に異なる点は何でしょうか。


前述の論文の中でPorterは1970, 80年台に世界中で急進出した日本車メーカーはOperational effectivenessでは優れていたがStrategyを持っていなかったと指摘しています。その結果、どの社も類似した製造、経営形態を維持することになったと分析しています。

これは現在の日本の学校、とりわけ私立校に顕著にあらわれている現象と似ているような気がします。どの学校も同じような成功基準、価値観、教育観、能力観を持ち、縮小する学齢人口の中で生徒数を維持することと限定的な数値を上げることに集中しているように見えます。

学校も経営のひとつとして捉えると、運営面でも教育の内容や方法においても確実なStrategyを設定することは必要不可欠でしょう。

“The challenge of developing or reestablishing a clear strategy is often primarily an organisational one and depends on leadership. With so many forces at work against making choices and tradeoffs in organisations, a clear intellectual framework to guide strategy is a necessary counterweight. Moreover, strong leaders willing to make choices are essential.” Michael Porter (1996) What Is Strategy?

「明確なStrategyの策定や再構築という課題は、多くの場合、主として組織的なものであり、リーダーシップにかかっています。」


もし学校のリーダーシップチームがStrategyの策定や再構築の必要性を感じていなかったら、学年や教科という小グループで取り組めば良いと思います。そこでも賛同を得られなければ、自分のホームルームやクラスだけでも試みにStrategyを持ってみてはいかがでしょう。

学力調査について

3/8/2025

 
7月最後の週に文部科学省・国立教育政策研究所から今年度の全国学力・学習状況調査の結果が発表されました。これは4月に小学校6年生と中学校3年生を対象に国語、算数・数学、理科の教科で実施された調査によるものです。「各年度の問題のなん易度を厳密に調整する設計とはしておらず、年度によって出題内容も異なることから、過年度の結果と単純に比較することは適当ではないことに留意が必要。」(国立教育政策研究所) という但し書きがありましたが、すべての教科で平均正答率が昨年度と比較して下がったという報道が流れました。


同じ日にAustraliaでは毎年3月に3、5、7、9年生を対象に実施されるReading, Numeracy, Writingの能力を測るNAPLAN (National Assessment Program - Literacy and Numeracy) の結果が公表されました。そして、3分の1の児童生徒はLiteracyとNumeracyで該当学年の習熟度レベルに達していないという報道がありました。どちらの国でも好ましくない結果があらわれました。


NAPLANの場合は教科内容、子どもたちが学習した内容に直接関係する設問ではなく、一般的で総合的な能力を測定することに重点を置いています。そして採点結果は4段階の習熟度レベル (Exceeding, Strong, Developing, Needs additional support) で表示されます。日本の学力調査とは異なり、個人の結果は学校や保護者にも届けられ実際の学習内容や指導計画に活用されます。さらにMy Schoolというサイトを通して全国に公表されます。このMy Schoolは学校の教育の質や財政状況を示唆するデータが掲載されており、NAPLANの結果も重要な指標として注目されます。結果が公表された直後に次のような記事(Podcast)が出てくるのもそのような背景があるからです。


"I think one of the things that we'd really like to see more movement on is strengthening early screening, particularly in reading and maths. So, there has been some movement particularly with almost all governments committing to implementing a year one phonics screening check in government schools. That's really great because I think Year Three is too late to wait to identify learning gaps, particularly in something as vital as reading. We really want to know early whether there's gaps and fill them quickly so that they don't become wider. But that fourth year of school is probably too late to wait for something like that." Grattan Institute (2025) Grading the 2025 NAPLAN results


質問です。
① 日本の学力調査は文科省が目的としてあげている「学校における児童生徒への学習指導の充実や学習状況の改善等に役立てる」ことに寄与しているでしょうか。その具体例があるでしょうか。「学力」の定義は何でしょうか。
② 日本の各学校に毎年提出が義務付けられている「学校評価」とAustraliaのMy Schoolにあらわれるデータの根本的な違いは何でしょうか。


学校や教育活動に関わる調査、そこから得られた結果の分析の究極的な目的は、組織としての学校の質や教職員の仕事の専門性を向上させること、創造的に課題を解決していくことにあるのだと思います。どのように前に進むかという姿勢が確立されていないと、調査はそれ自体が目的となってしまいます。


さて、同じ週にAustralia政府は、16歳以下の子どもがアカウントを開くことや利用を禁止するsocial media platformにYouTubeも加えることを発表しました。すでに学校内では携帯電話の所持が禁止されています。休み時間の子どもたちの行動や活動が、禁止される前とは完全に様変わりしました。

    Author

    萩原   伸郎

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