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2017年に書いたIdeasのblogに、Harvard UniversityのSandel教授が2013年に登壇したTED Talkで述べられた指摘を引用しました。
"Over the past three decades, we have lived through a quiet revolution. We've drifted almost without realising it from having a market economy to becoming market societies. The difference is this: A market economy is a tool, a valuable and effective tool, for organising productive activity, but a market society is a place where almost everything is up for sale. It's a way of life, in which market thinking and market values begin to dominate every aspect of life: personal relations, family life, health, education, politics, law, civic life.” Michael Sandel (2013) Why we shouldn't trust markets with our civic life 「過去30年間、私たちは静かな革命を経験してきました。私たちはほとんど気づかないうちに、市場経済から市場社会へと移行してきたのです。その違いはこうです。市場経済とは、生産活動を組織化するための価値ある効果的な「道具」に過ぎませんが、市場社会とは、ほぼすべてのものが売り物となる場所なのです。それは、市場的な思考や価値観が、人間関係、家庭生活、健康、教育、政治、法、市民生活など、生活のあらゆる側面を支配し始めるような生き方なのです。」 中東情勢を報道するニュースは、痛みや悲しみの最中にいる人々を置き去りにして、常に株価や原油価格の動向などとセットになって報道されます。それを見るたびにSandel教授のこの言葉を思い出します。あれから10年以上過ぎ、教授が憂うべき現象として訴えていた市場社会が私たちを取り巻く日常的な現実になっていることを感じます。 質問です。 ① もしあなたが公共放送の国際報道担当だったら、あるいは全国紙の新聞社の国際部担当だったら、中東情勢についてどのような視点で取材をしてどのような情報を日本に住む人々に伝えるでしょう。 ② 教室の子どもたちは遠く離れた地域や国で紛争や戦争が起きていること、子どもたちや市民が犠牲になっていることをどのような媒体を通して状況を正確に知るのでしょうか。子どもたちの感情や心情を学校や教師はどのように受け止めているのでしょうか。 自分の生活を守ることや世の中の動向に敏感になることは当然のことですが、市場的な思考や価値観の浸透は、道義的、倫理的な判断基準ではなく自分にとって価値がある物事だけを支持し、数値化や効率性を追い求め、業績主義 Meritocracyを蔓延させます。広い視点で物事の連鎖反応や因果関係を理解する能力や、社会的弱者への共感や共同体意識を持ち共通善 Common goodのために自分ができることを模索し行動に移す能力と対極にあります。 世界の中枢にいる人々がこれまでの惨状について何も発言、行動しない中で、レオ14世教皇の厳しい現状批判に世界中の多くの人々が、宗教を超えて共鳴しています。 "To them we cry out: stop! It is time for peace! Sit at the table of dialogue and mediation – not at the table where rearmament is planned and deadly actions are decided.” "Enough of the idolatry of self and money! Enough of the display of power! Enough of war! True strength is shown in serving life.” Pope Leo 11 April 2026 「私たちは彼らに向かって叫びます。やめてください!今こそ平和の時です!再軍備が計画され、殺戮的な行動が決定される場ではなく、対話と調停の場についてください。」 「自己や金銭への崇拝はもういい! 力の誇示はもういい! 戦争はもういい! 真の強さは、命を慈しむことにこそ表れるのです。」 学校の教育活動の基本理念をもとに策定されたVision for Learningのような構想や方向性は、学校コミュニティの中で共有され、具体的に挙げられているCompetenciesが日常の教育活動を通して系統的に指導され評価されることによって、理念が現実化され子どもたちが必要な能力を獲得するという一連のつながりについて先週述べました。
系統的な知識の習得を確実なものにするためにカリキュラム、学習活動、評価という要素が有機的に連結されています。それと同様に、Competencies 能力や資質の獲得も3要素の中に含まれ、多くの教室で実践されているはずです。しかし教育評価の対象は常に評価しやすいものに重点が置かれるという慣習から、正しく測定することがむずかしいCompetencies の評価は見過ごされてきたように思います。 この点についてYale UniversityのGordon名誉教授は次のように指摘しています。 "we have been evaluating the outputs of education while neglecting the processes of learning that produce those outcomes. The result is an underutilisation of assessment's potential: its potential to guide teaching, to inspire students, and to support the cultivation of intellective competence–that is, the capacity and disposition to use knowledge and thinking skills to solve problems and adapt to new challenges." Edmund W. Gordon (2025) Toward assessment in the service of learning 「私たちは、教育の成果を評価する一方で、その成果を生み出す学習のプロセスを軽視してきました。その結果、評価が持つ可能性 - すなわち、指導を導き、生徒を励まし、知的能力つまり知識と思考力を活用して問題を解決し、新たな課題に適応する能力と姿勢を育む可能性 - が十分に活かされていないのです。」 質問です。 ① これまでにCompetenciesの直接的・間接的な獲得をねらって実践された学習活動の中にどのような成功例や予想通りに展開しなかった事例があるでしょうか。その際にどのような評価方法を採用されましたか。 ② 教科学習の中で、どちらかというと主観的に拾い上げた子どもたちの努力やがんばりを「努力点」として点数化する習慣がありますが、Competenciesを正しく評価するという観点で考察するとどのような仕組みや方法があるでしょうか。 "If our aim is to understand learners' thinking and guide their progress, we must look beyond right-or-wrong answers. We need to examine process: How did the student arrive at this answer? What misconceptions were revealed in their intermediate steps? How did they respond to hints or setbacks?", "Our assessment systems should ultimately aim to foster and capture these broad competencies: critical thinking, adaptability, creativity, and the capacity to learn how to learn.” Edmund W. Gordon (2025) 「学習者の思考を理解し、その成長を導くことが目的であるならば、正誤という結果だけにとどまらず、その過程にも目を向ける必要があります。具体的には、次のような点を検討する必要があります。その生徒はどのようにしてこの答えにたどり着いたのか?その過程でどのような誤解が明らかになったのか?ヒントや挫折に対して、どのように対応したのか?」「評価システムは、最終的には、批判的思考力、適応力、創造力、そして「学び方を学ぶ」能力といった幅広い能力を育成し、把握することを目指すべきです。」 多くの教育者が時間を厭わず細やかな個別指導を実践されてきました。私たちはそれらの実践例に触れるときに大きな感動があります。しかしながら、組織としての学校を考えた時、現在の最大の可能性はAIの活用にあると考えます。 AIを積極的に活用する学校の一例としてAlpha Schoolがあります。ここでは子どもたちはMastery based AI tutorと毎日2時間の教科学習をします。その後はlife skills (リーダーシップ、チームワーク、起業、プロジェクト)の活動に時間を使います。Joe Liemandt校長のインタビューです。 |
Author萩原 伸郎 Archives
4月 2026
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